世田谷山 観音寺
世田谷山 観音寺。名前の通り、聖観世音菩薩が御本尊のお寺です。一般には「世田谷観音寺」で通っていますよ。
場所は東京都世田谷区の下馬。三軒茶屋駅から徒歩15分ぐらいでしょうか。歩くのが大変だなぁと思ったら、三軒茶屋駅から目黒駅行きのバスに乗れば、あっと言う間のアクセスです。
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お寺の特徴
初めてお参りした方が驚くのが、その歴史かも知れません。
開山は昭和26年。戦後に出来たお寺です。(単立ですが、怪しげな新興宗教団体ではありませんよ!)
天台宗系の密教寺院で、お堂や仏像の多くが古い歴史があり、移築されてきたものです。そのため境内は新しいお寺とは思えない佇まいを見せています。そうした仏像の中には、鎌倉時代に作られ国指定重要文化財になっている不動明王像(秘仏)や、天正時代の作という御本尊の観音様などがお祀りされています。
また境内は広々とした庭があり、ベンチも置かれているのでお堂を眺めながら日頃のストレスを忘れてホッとするにも良い聖域です。
そんなホッとするお寺ですが、住職・副住職のお二人が基本的にお守りしています。大きなお寺にお参りすると何となく御朱印を頂くのでも事務的な感じを受けますが、このお二方から、そんな感じは全く受けません。掃除でも草むしりでも、何でも人任せにせずに忙しそうに動き回っています。
だから、お守りを頂こう!御朱印を書いてもらおう!と思って寺務所に入って声を掛けても「しーーーーん」としていることがあります。そんな時には境内と言うか、敷地を歩き回ってみると良いです。きっと手入れに精を出されているはずですから。
そして、まるで植木屋さんや作業員さんのような人を見つけたら「お寺の方ですか?」と聞いてみてください。きっと住職さんか副住職さんですから(笑)
密教だから
よく仏教では「現世利益は煩悩」みたいな事を考えますが、密教(天台宗など)の場合、現世利益も受け入れてもらえます。その中には「病気平癒」や「健康長寿」といったものもありますし、「商売繁盛」「社業繁栄」、そして「恋人が欲しい(恋愛成就)」「金運アップ」なんてお願いをしても観音様もお不動様もきっと聞いてくれます。そして願いが叶わなかったら「次こそは叶えてください」と更にお願いしてみましょう。という事で叶願も、お客様の諸願成就の為にとお願いをして快くご祈祷を引き受けて頂けました。
素敵な仏像と少し珍しいお堂
お迎えしてくれる大黒天・恵比寿天
バスで行かれる方はバス停直近の裏口から、徒歩なら表の山門からの参拝になると思います。その両方の入り口に大黒天様と恵比寿天様がニコニコと笑いながらお迎えしてくれます。笑顔のお出迎えは、きっとリラックスして参拝して欲しいと言う事なんだと理解している私は、常に緊張感なく境内のあちこちで手を合わせながら、散策&参拝しています。
秘仏 不動明王像
不動明王と眷属である八大童子像は、仏師「慶派」で有名な運慶さんの孫である康円さんが全て作ったと言う大変貴重なものです(重要文化財ですから当然ですが…)。普段は、不動堂の前の案内板にある写真でしか拝む事ができませんが、毎月28日のご縁日には、2時から始まるご法要に合わせて御開陳となって直接拝むことができます。その保存状態も素晴らしく、また護摩焚きの暖かさ(夏は暑さになります)で手を合わせていると、とても心地よく包まれていくような気がしてきます。
また、ご法要の終わりには間近で拝むことが出来ますから、もし初参拝!と思うことがあれば28日がお勧めです!
阿弥陀堂
お堂の名前の通り、阿弥陀如来様がお祀りされていますが、他に足の速さで有名な韋駄天さん、そして五百羅漢寺から流出した五百羅漢像のうちの9体、また左甚五郎作の鬼念仏など小さなお堂の中にぎっしりとお祀りされています。
ご本堂
ご本堂には、御本尊の聖観音菩薩の他、最近、あちこちのお寺で「良縁成就」「恋愛成就」のご利益で一押しになっている愛染明王やマリア観音などが祀られています。普通、聖観音菩薩像は左手が広げられ、手のひらを見せた状態で下に下げられていますが。が、こちらの聖観音菩薩では良く見てみると人差し指と中指を立てて、まるで開いていないチョキのような形に印を結んで下げられています。これは「刀印」と言うそうで大変珍しい像容だそうです。そしてその意味は、一つには観音様が説法されているお姿、そしてもう一つは悪縁や魔を切る為に指を刀にしていると伺った記憶があります。観音様の御縁日にも本堂には上がれますが、普段でも住職さんや副住職さんにお尋ねになると入堂をお許し頂けるかも知れません。
特攻平和観音など
神社にあってお寺にないもの…。まぁ、色々あるわけですが、その一つに「忠魂碑」や「護国社」など戦死者・戦没者を慰霊するための施設は殆どのお寺にはありません。が、こちらでは「特攻平和観音」として特攻で戦士された方々を慰霊するためのお堂があります。毎月18日に法要が行われるので、親戚やご先祖様に特攻をされた方があればお参りして頂きたいと思っています。
また、このお堂の近くには天山隊之碑や神州不滅特別攻撃隊之碑があります。特に神州不滅特別攻撃隊は私達が終戦後と思っている昭和20年8月19日にソ連の戦車隊に向けて特攻を行った部隊で「妻と飛んだ特攻兵」として書籍化され、ドラマにもなったのでご存知の方も多いとは思いますが、一般には軍規違反や無謀などと言う形でほぼ資料もないままになってるため、恐らく他の特攻兵の方のように靖国神社でお祀りされていることも無いのかも知れません(すいません…調べれば分かるんですが…)。
このように批判を受けた行動でしたが、実際には現在のウクライナ情勢でも解る通り、ロシア・ソ連の軍隊は規律が低く非常に乱暴な事で知られています。そんな中で日本の戦闘機が鹵獲され、また軍人の殆どが武装解除した丸腰では、満州にいる人達が逃げ延びる事は非常に難しくなります。その為、この人たちは玉音放送の事も知りながら敢えて特攻と言う手段をとって少しでも多くの日本人に逃げるチャンスを作りたかったのだと思います。小さな慰霊碑ですが、特攻平和観音と一緒にお参りしてみませんか?
とまぁ、少し変わったお寺なのかも
そしてお寺と言えば墓地ですが、こちらは祈願寺、つまり霊園・墓所はなくお檀家さんもいないお寺です。京都などでは拝観料を取る形の祈願寺も少なくないと思いますが、東京では珍しい存在です。神社仏閣巡りをしていると「檀家さん以外はお堂には上がれません」と言うお寺も多く、参拝者としては壁を感じるのですが、祈願寺なのでそんな遠慮は不要です。
また法要の時にはお馴染みさん達が会話していて、ちょっと臆するところがあるかも知れませんが、沈黙を貫いても良し、会話に加わってみても良し。気持ちよく法要の時間で仏様と会話してみてください。(そんな中にワタシがいるかもしれませんし…)
そして、一つ注意なのが、法要のない土曜・日曜の午後は閉まっていることが多いので、出来るだけ法要の日や平日の参拝をお勧めします!法要の日や詳しいアクセスは、公式サイトを参照してください!